Vol.44 秋号
森川 潤一さん【千曲市】

ニッポンのものづくり企業として、未来の需要を模索する

戦後、日本の経済成長をけん引してきた自動車産業。その一翼を担って、確かな鋳造技術でエンジン回りの重要部品を製造してきたのが森川産業です。今回登場いただくのは、4代目社長の森川潤一さん。自動車産業が転換期を迎え、市場が縮小傾向にあるなか、経営トップとしての苦悩と緊張は尽きません。そんな森川さんがほっとできる場所が、奥様と3人の娘さんが待つわが家。2009年に新築したホクシンハウスで、家族や友人とともに、心あたたかな時間に癒されています。

ワンちゃんたちも一緒に 山荘みたいにくつろぐ

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取材に伺ったときは、ホームパーティーの準備中でした。森川さんと中澤浩明さん(ホクシンハウス統括支店長)の家族が集まり、森川家の2匹のワンちゃんも加わって賑やかなこと。じつは、森川さんと奥様の珠美さん、中澤さんの3人は高校の同級生。しかもそれぞれの娘さんたちも年齢が近くて大の仲良し。毎年、一緒にハロウィンを楽しんでいるそうです。
「中澤さんには、何でも相談できました。アルプスの少女ハイジの家の屋根裏みたいに梁を渡せるかとか、らせん階段って可能?とか」と珠美さん。玄関はなく、扉を開ければすぐにリビング。靴は2階に上がる時だけ脱ぎ、 1階は下足のまま。傍らには薪ストーブが燃え奥にはグランドピアノ。木をふんだんに使い、山荘のようなぬくもりのある大空間です。
「FB工法の断熱性能のおかげで、今年の猛暑もエアコンなしでずっと過ごせました。冬の暖房では、趣味で薪ストーブも使っているんですよ」 外気温を遮断し、邸内の蓄熱効果にも優れるFBスーパー工法の家に住まう森川さんです。
自身は特に要望を出さず、「家づくりは嫁のこだわりに従った」という森川さん。
珠美さんは、「伝統あるものとか、古いものの趣に惹かれるんですけど、今、日本の一般の家屋は日本の伝統文化を守る方向ではなく、本当に自由に様々な建物であふれています。逆に日本古来の家を、材料までこだわって建築する方が難しい。だったら、私も自由に冒険してみようと思いました。」とのこと。
またお二人は、「中澤さんが同級生だったから、というだけでお任せしたのではありません。ホクシンハウスさんの無暖房住宅という考え方に大きな魅力を感じました。」
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夫婦で勉強した自然科学

ちょうど家を建て始める少し前、珠美さんが子育てする中で環境問題に対する関心が深まり、夫婦で自然科学の勉強をする機会に恵まれました。そこで、地球がどんなにこわれかけているのか、その原因を作ってるのは私たち人間なんだ、という事実に直面し2人の価値観、人生観が大きくゆらぎました。家を建てる前には土壌改良をし、まわりの庭も珠美さんがこだわって手入れしています。
「自然界には、土の循環、水の循環、空気の循環があって、土が良くなれば他も良くなってくると勉強しました。土の循環を良くするために、自然界の自浄作用を邪魔しないように庭の手入れをしています。うちのワンちゃんたちもハリネズミも、のびのび過ごせているんじゃないかな。」
ゴールデンレトリバーの海くん、ウェルシュコーギーのアンちゃん、ハリネズミの春くんは大切な家族の一員です。
森川さんも「心からのんびりできる家になりました。休日の楽しみは、料理を作って家族にふるまうこと。これがいい気分転換になっています」と嬉しそう。
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祖父の築いた会社の重みを感じて

森川さんは、森川産業の創業者の一人である祖父 寿さんの存在の大きさをいつも感じるといいます。
「祖父は九州の出身で、故郷から一族や周りの方々を沢山長野の地へ呼び寄せ、皆で力を合わせて努力し、森川産業を一時は700名余りとなる規模にまで成長させてくれました。自分には想像もつかない事でして、未熟さを痛感しています。祖父はいつも仕事で留守が多かったですが、忙しい中でも趣味で洋画を描いていました。そんな感性が工場の建屋デザインにも感じられる部分があり祖父の残してくれたものを大事にしたいという思いがあります」
森川さんが小学4年の時にお祖父さまが亡くなります。
「病床の最後の方では、私の事だけをじっと見つめていました。私の頭の中には、頼んだぞ、という声が聞こえていました。それでも若いころは、自分が継ぐ事はないと軽く考えていた事もありました。しかし今、実際社長になり難しい局面に立ち向かう中で、祖父の最後の自分を見つめる目を思い出すたび、頼んだぞ、という声が聞こえてきます。これまで支えてきて頂いた社員の皆様のご恩に報いるためにも頑張っていこうという思いです」と森川さん。
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2016年 森川産業 第4代社長に

森川産業の創業は、終戦の1945年。日本が目覚ましい復興を遂げるなか、自動車産業が勃興し、世界的なモータリーゼーションの波に乗って、国内販売の伸びはもとより輸出の主要産品として成長してきました。
いまや自動車はますます進化して、電気でモーターを動かすEV(電気自動車)、無人で運転する自動運転、はては空飛ぶ自動車も試作されるようになりました。カーシェアの普及に加え、トヨタとソフトバンクによる新会社設立もニュースになりました。自動車産業は『100年に一度の大変革期』に直面しています。そんな激動の時代に、第4代社長に就任した森川さん。 「5000年の歴史があると言われる鋳造は学術的に解明されていない部分も多くあります。ですから技術者の感覚や経験といったものが非常に重要です。人材育成は、急務の課題といえますが、人手不足の問題にも直面し、IoTやAI技術を用いて、分析・応用・技術に生かす道を模索しています。課題山積ですが、まだまだこれからです」
「鋳物技術の可能性に挑戦し、社会に必要とされる企業に成長していきたいと頑張っています。まだまだ模索するばかりでもがいている段階ですが、生活用品などのジャンルに鋳物技術を使って何か出来ないか、など色々と考えています。」と意欲を見せます。
人手不足の問題は、少子高齢化のなか、製造業においては特に深刻で、工場の自動化や設備投資の他に、フィリピンからの実習生を積極的に迎えています。彼らを社内報で紹介するなど、若い力を生かせるような雰囲気づくりにも努めています。
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冷凍空調機器では国内シェア8割を占める

自動車部品の鋳造がメインですが、冷凍空調機器のバルブ関連製品の部門もあり、こちらはなんと国内シェアの8割を占めています。冷凍倉庫、スケートリンクや食品工場などの大規模な冷凍設備に使われるもので、ニッチな分野ながら、まさに残存者利益を獲得できているといえます。環境規制に伴い、冷凍設備の入れ替え需要があり、売り上げは緩やかな好調。そんななかで、次世代高圧化バルブの開発も着実に進めています。
海外は、中国・上海に子会社があります。上海森川は現地で生産した“日本と同品質”の鋳造部品を自動車メーカーに供給しています。受注量の急な減少、厳しいコストダウン要請など悩みは絶えませんが、着実に現地に根を下ろしています。
「当社で製造しているものは地味ですが、決して無くならない、世の中に必要な製品。厳しい環境のなかで、当社の強みを生かしていきます」 
中国や海外、また国内の出張も頻繁な森川さん。どんなに難しい案件を抱えていても、家に帰れば、たちまち緊張がほどけるのだとか。実はものづくりを陰で支えているのは、ご家族と、この家の存在かもしれません。
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