北海道住宅新聞(H18/8/15付)


本気で無暖房ですか?

北信商建(株)・相澤英晴社長に聞く

北信商建・相澤社長とFBソーラー無暖房住宅のカットモデル

京都議定書の発効や石油価格の高騰などによって、高断熱化や高効率熱源機で暖房エネルギーを大幅に削減する住宅が注目を集めている。本紙ではこの動きを一過性のもので終わらせないため、一歩進んだ省エネ住宅に取り組む挑戦者・識者らに、それぞれの視点から省エネ住宅のあり方について語って頂く連載記事「高省エネ住宅の視点」を企画した。第1回目は長野で無暖房住宅の普及を目指す北信商建(株)の相澤英晴社長に話を聞いた。







暖房せず室温保つ 生活発生熱や太陽光が熱源

スウェーデン・ヨーテボリに建っているタウンハウス形式の無暖房住宅

 無暖房住宅はスウェーデンの建築家であるハンス・エイク氏によって日本に紹介されたもので、今から4年前にスウェーデン第2の都市・イエテーボリ市のリンドース地区に建設されている。

 この住宅は暖房設備を必要とせず、外壁420mm、天井500mmにも及ぶ断熱や熱交換換気、建築的工夫による日射熱の取得と遮蔽などによって外気温がマイナス16℃でも室温を20℃に保つことが可能。熱源は居住者の体温や家電・照明など生活発生熱と太陽光だ。

同社長野東展示場に建てられたFBソーラー無暖房住宅の実験モデル



 国内では信州大学工学部社会開発工学科の山下恭弘教授(工博)が昨年8月に実験棟を建設して研究を行っており、日本の住宅の省エネ水準向上とサスティナビリティの実現・普及という山下教授の趣旨に賛同した北信商建では、昨年10月にFBソーラー無暖房住宅(特許申請中)の実験モデルハウスを着工。今年1月にプレオープンし、山下教授の協力により各種データの測定・検証を進めている。




地球環境保護が目的 住宅会社としての使命感から

 「長野を含めて日本では毎年のように異常気象に見舞われるようになっています。地球環境をこれ以上悪化させないためには、最小限の設備とエネルギーで暮らせる家を提供するのが住宅会社としての使命感だと考えました」。同社の相澤社長はFBソーラー無暖房住宅への取り組みについてこう語っている。
 実際、長野では今年の冬に大雪、7月には大雨による土砂災害に見舞われ、この夏は蓼科高原の観光の目玉と言われているニッコウキスゲが、北上した鹿の食害に遭っている。「大雪、大雨も鹿の北上も地球温暖化の影響ではないか」と相澤社長。この状況を改善するため住宅会社としてやらなければならないことが、人の健康に配慮しながら地球環境の維持・保全を考えたライフスタイルというロハスの考えに基づいたサステナブル(持続可能な)住宅。FBソーラー無暖房住宅はその形の一つだという。
 これまでも同社は長野で高断熱・高気密住宅にいち早く取り組み、外断熱のFB工法や、太陽熱を暖房・給湯に利用したFBS工法、FBソーラーを開発してきたが、「エネルギー消費を最小限に抑えるという考え方はこれまでの工法でもFBソーラー無暖房住宅でも同じこと。ユーザーにはプランニングを進めながらどの工法で建てるか決めてもらうことになります」(相澤社長)といい、従来工法と同様に本気でFBソーラー無暖房住宅を自社の主力商品とする考え。

給湯エネ削減も図る 太陽熱を積極的に利用

 ただ「断熱厚を増したとしても、生活発生熱だけの完全な無暖房は難しい。太陽熱で作った温水を床下放熱器の熱源や給湯に利用するFBソーラーがあってこそ無暖房住宅に挑戦できました」と相澤社長は話す。
 天気が良ければ給湯にエネルギーを使わずに済み、冬は太陽熱で暖めた温水を暖房放熱器に回せるFBソーラーは、同社の新築住宅の多くで設置している。住宅で消費されるエネルギーは、暖冷房、給湯、照明・家電がそれぞれ3分の1程度であり、暖冷房に加え給湯や照明・家電エネルギーも削減して初めて“環境にやさしい”と言えることから、サステナブル住宅の一つの形である無暖房住宅を実現し、普及を進めていくうえでFBソーラーは欠かすことができないものとなっている。
 スウェーデンに建つ無暖房住宅も太陽熱温水器によって給湯エネルギーの削減に取り組んでいる。

外断熱厚は400mm Q値は次世代1地域の半分

実験モデルでは電球付きの人体模型や家電製品、照明などの稼働時間をコンピュータ制御し、人が生活する室内での発生熱をシミューレーションした状態で温湿度などの測定を行っている

 実験モデルは延べ床面積約44坪の2階建てで、断熱仕様は外壁と天井(桁上断熱)がセルローズファイバー400mm、基礎が押出スチレンフォーム外側B1種30mm+内側B3種100mm、窓が木製サッシ・クリプトンガス入りトリプルLow-Eガラス。
 換気は第1種熱交換換気システムとし、熱交換換気による省エネ効果を次世代省エネ基準方式で計算した場合の熱損失係数=Q値は0.75W(/平方メートル・K)と、長野の地域区分である3地域はもちろん、1地域の次世代省エネ基準も大きく上回る。この断熱仕様にFBソーラーを組み合わせることで暖房エネルギーはもとより、給湯エネルギーの削減も可能にする。本格販売は早ければ来年からとしており、断熱仕様については実験モデルとほぼ同じになるという。
 この実験モデルを建てた理由として相澤社長は「冬は生活発生熱だけで室内を18℃に保てるのか、夏は逆に暑くなりすぎないかを確かめたかったのです」と話す。
 完成したのは冬も終わりの頃だったので、本格的な冬用の室内環境は今度の冬まで待たなければならないが、夏期の室内環境については「洞穴に入ったようにヒンヤリしており、無暖房住宅は夏でも快適に過ごせると胸を張って言えます。通風を図って西日を入れないようにすれば何も問題はありません」(相澤社長)とのこと。
 これまでのところ、室内環境は暖冷房設備を備える次世代省エネ基準の住宅となんら変わりはないという。

意識が高い層には有力な選択肢

施工中の現場。外壁断熱厚が400mmもあるため、窓は出窓のようになる

 プレオープン時には地元のテレビ局や新聞社の報道を見て、興味を持ったユーザーが次々に訪れ、実際に「灯油価格が上がったのでこういう家を建てたい」というユーザーもいた。ただ、シミュレーションでは無暖房が可能なものの、実際に冬期の室温を18℃に保てるのか、夏期にオーバーヒートにならないかを実証したうえで商品化する考えだったため、同社は積極的な受注活動は行わなかったそうだ。それでもこのほどFBソーラー無暖房住宅を契約したユーザーは、住宅について勉強した中で新築を決めてくれたという。
 今、アメリカでは『An Inconvenient Truth-都合の悪い真実-』と題したドキュメンタリー映画が大きな話題を呼んでいるが、これはクリントン政権時代の副大統領で民主党元大統領候補のアル・ゴア氏が行ってきた地球温暖化に関する講演を映像化したもので、一般市民から高い支持を得ている。FBソーラー無暖房住宅の開発もこの映画同様、一人ひとりが地球環境問題への意識を高めなければならないことが背景にあり、新築を決めたユーザーのように環境や省エネに対する意識が高い人を中心に受け入れられる素地は充分ありそうだ。

課題はやはり価格 性能高めながらコスト抑制

建物をできるだけ長く使えるよう、外壁は室内側にも通気層を設けて配線・配管スペースとし、リフォームの際にも断熱・気密層を傷めずにコンセントやスイッチ類を移設できるようにした

 今後、普及にあたっての課題として相澤社長は“いかにコストを抑制しながら性能を向上させるか”を挙げている。いい住宅だから価格も高いというのでは、ユーザーに受け入れられないからだ。販売価格の目標はFBソーラーを含めて坪単価60万円。
 例えば実験モデルでは壁の断熱層を室外側に付加するのではなく室内側に付加し、断熱材にセルローズファイバーのブローイングを採用することでコストを抑制。断熱材を室内側に付加すると外装材を支持する釘の保持力が問題となり、材料コストもかかってくるが、室内側に断熱層を厚くして断熱材を吹き込む分には、それほど材料コストはふえないという。室内側に壁が厚くなるため、そのままだと居住空間が狭くなるが、外壁が厚くなる分を見込んで通常より外壁を室外側に出す設計とする。宅地が狭い都市圏とは異なり、長野の宅地環境であればそれは難しいことではないそうだ。
 壁・天井に使うセルローズファイバーは新聞古紙を主原料とした環境付加の少ない断熱材の一つであることから採用。断熱層と内装仕上げの間には配管・配線スペースも兼ねた通気層を設けることで、リフォームの際に断熱・気密層を傷めることなくコンセントやスイッチ類の移設も可能にし、環境付加とコスト負担を低減しながら建物を長いライフサイクルで使えるようにしているのも大きな特徴と言える。
 また、性能向上という点では窓の断熱性と換気効率をいかに挙げるかを考えているところと言い、窓については断熱戸を設けるなどの工夫も視野に入れている。

普及前にして確かな手ごたえ

 今年、同社では実験モデルで良好な結果が得られていることに次の主力商品としての自信を深め、教会と一般ユーザーの住宅1棟をFBソーラー無暖房住宅で建てることが決まっている。さらにこの住宅の必要性をわかってもらおうと総合展示場でのモデルハウス建設にも踏み切り、気温が下がり始める今年の秋くらいからこれまでのデータも用意して、実際に地元ユーザーに評価してもらうという。
 福島からも見積もりの話があるなど、「無暖房住宅は確実に広がりつつあります」と相澤社長。普及を前に確かな手応えを感じているようだ。


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