北海道住宅新聞 掲載記事

無暖房住宅を開発 長野・北信商建 外壁400mm断熱+太陽熱利用

長野の北信商建(株)(本社長野県飯綱町、相澤英晴社長)では、外壁400mmなどI地域の次世代省エネ基準を大幅に上回る断熱性能と、太陽熱を利用する同社独自のFBソーラーにより、居住者の人体発熱と家電・照明などの生活熱など室内発熱だけで暖房せずに快適な室内環境を維持できる「FBソーラー無暖房住宅」(特許申請中)の実験モデルハウスを同社長野東展示場にこのほどプレオープン。地元マスコミにも相次いで紹介されるなど、大きな反響を呼んでいる。

環境問題に積極対応 信州大・山下教授に賛同

無暖房住宅の実験モデル外観。レッドシダーの外装仕上げが特徴的

 同社の地元である長野県は、(財)新エネルギー財団が実施している太陽熱高度利用システム補助制度の補助金交付件数が全国で最も多く、住宅用太陽光発電導入促進事業による太陽光発電設置件数も関東・東海・関西の都府県や福岡県に次ぐ数を記録するなど、省エネ意識が高い地域として知られている。
 同社はその長野県で高断熱・高気密住宅にいち早く取り組み、さらに太陽熱を暖房・給湯に利用するシステムであるFBソーラーを開発し環境共生住宅認定を取得するなど、快適で省エネな家づくりを積極的に進めてきたが、昨年、同社も参加している信州の快適な住まいを考える会会長で信州大学工学部社会開発工学科の山下恭弘教授(工学博士)が、日本の住宅の省エネ水準向上と、環境と調和するサスティナビリティの実現・普及を目指し、徹底した高断熱化により暖房しなくても冬を快適に過ごせる無暖房住宅の実験棟を建設し、研究を開始。同社も山下教授の考えに賛同して無暖房住宅の本格的な開発に着手し、地球温暖化など深刻さを増す環境問題や灯油価格高騰など昨今の経済情勢への対応を視野に、昨年10月、FBソーラー無暖房住宅の実験モデルを着工した。

室内側へ断熱層拡大 壁内通気層設け配線等に利用

軸間に加え、さらに室内側に断熱層を取って400ミリ断熱を実現した外壁のカットモデル。右側にある100ミリ断熱の壁と比べるとその差は歴然。

 FBソーラー無暖房住宅の実験モデルは、延床面積約44坪の2階建て。外壁と天井(桁上断熱)がそれぞれセルローズファイバー400mm厚、基礎が押出スチレンフォーム外側B1種30mm+内側B3種100mmという超高断熱仕様と、太陽熱で暖めた不凍液を300リットルの貯水タンクで熱交換して給湯に利用すると同時に、床下に設置した3台の放熱器にも不凍液を送って、暖まった床下空間の空気を壁体内に循環させるFBソーラーの組み合わせが大きなポイントとなっている。
 外壁は、4寸角の柱の室外側にシージングボード12.5mmを張った構造壁の軸間とその室内側にセルローズファイバーを合計400mm吹き込み、その上から防湿・気密シートと石膏ボードを張った後、36mm角の縦銅縁を303mmピッチで入れて通気層を確保し内装下地の石膏ボードを施工。この通気層部分は百年住宅としての耐久性・可変性を考えて設けたもので、配線・配管スペースに使うことでリフォームや間仕切りの変更の際に断熱・気密層を傷めることなくコンセントやスイッチ類の移設を可能にしており、新鮮空気や床下の暖気を循環させる役割も持つ。通気層を構成する断熱層室内側部分は構造柱と添え木で緊結した縦桟に固定し、室内側の通気銅縁も大引・梁・桁の間に入れた受材に釘打ちして壁全体の強度を確保している。
 なお、外壁構成の詳細は、室外側から外装材→通気層→透湿・防水シート→シージングボード12.5mm→セルローズファイバー400mm→縦桟36mm角303mmピッチ→防湿・気密シート→石膏ボード9.5mm→縦銅縁36mm角303mmピッチ→石膏ボード12.5mm→内装仕上げーとなる。
 室内の広さを優先して軸組室外側へ断熱材を付加することも考えられるが、同社ではコストメリットを優先して室内側へ断熱層を拡大。室内側に壁が厚くなるため、そのままだと室内空間が狭くなってしまうが、実験モデルでは通常の設計より大きくして室内の広さを確保しており、市販にあたっても同様の手法で設計する考え。

Q値は0.75W 暖房負荷は実質的にゼロ

壁体室内側に設けた通気層は配線・配管スペースとして使えるため、リフォームなどで断熱・気密層を傷めずにコンセントやスイッチの移設が容易にできるメリットがある

実験モデルは来場者が400ミリ断熱の壁体構成を見ることができるように、壁の一部をスケルトンにしてある。一見、出窓に見えるほど壁厚があるのがわかる

 窓は特注で熱還流率1.0Wのスウェーデン製木製サッシ・クリプトンガス入りトリプルLow-Eガラス、換気は第1種熱交換換気システムを使用しており、気密測定では相当隙間面積0.2cm/平方mを記録している。熱交換換気による省エネ効果を次世代省エネ基準方式で計算した場合、熱損失係数=Q値は0.75W(/平方m・K)と、長野の地域区分であるIII地域の次世代省エネ基準(2.4W)の3分の1以下、I地域(1.6W)と比べても2分の1以下となる。
 同社のシミュレーションによると、冷房負荷は7月に1600MJ程度、8月に2800MJ程度かかるものの、各月の暖房負荷はFBソーラーの放熱量によってすべてまかなえるため、実質的な暖房負荷はゼロ。また、III地域の次世代省エネ基準仕様と比べた場合、暖房エネルギーは原油換算で560リットル削減、CO2排出は116.5kgとなり750kg削減可能だ。

一部規格化し坪60万目指す

1階に屋根のソーラーパネルで週熱した太陽熱でお湯を作る貯水タンクを設置

 今後、同社では山下教授との協同研究により、発熱用の電球を取り付けた人体模型や照明・家電製品を実験モデルに設置し、時間帯によってそれらの動作を制御することで4人家族の生活をシミュレーションし、室内外の温湿度や壁体内の温度などを計測。性能や快適性を検証し、十分なデータを得てから販売・普及を進めていく考えだ。
 なお、市販にあたっては、室内の間取りやデザイン、仕様などは自由に選べる一方、総2階建ての形状や窓の数、配置などは規格化することで、FBソーラーを含め坪当たり60万円くらいの販売価格に抑えたいとしている。
 同社の相澤社長は「すでにマスコミの報道を見て多くの問い合わせがあり、プレオープン前に実際に見に来るユーザーもいたほど、無暖房住宅に対する地元の関心は高い。今年は希望者にモニター価格で販売し、実測データなどを検証してから本格的に販売していきたい」と話している。



信州大・山下教授 昨年8月に実験住宅 外壁500mmで無暖房実現

北信商建が無暖房住宅を開発するきっかけになった信州大・山下教授の無暖房住宅の研究では、昨年8月に大学の敷地内に建てた実験棟に電球付きの人体模型や照明、テレビ、冷蔵庫などを設置。それらの動作を時間帯制御することにより人が生活する室内での発生熱をシミュレーションし、室内外の温湿度や壁体内・地中・小屋裏の温度などを常時測定。さらに実際に学生が実験棟に寝泊りし、快適感や体感温度などについてのアンケート調査も行っている。
山下教授は無暖房住宅を「I地域の次世代省エネ基準の2倍以上の断熱・気密化を図り、きちんと計画換気した状態で、人体発熱と照明・家電製品の発生熱で室温を維持できる住宅。ただ、高齢者や体の弱い人が住む場合や、不在時間が長い場合などを考えて、最小限の暖房設備は設けることが必要」としており、実験棟は室内が8畳の広さで外壁がグラスウール24K500mm、床が同400mm+押出スチレンフォーム100mmで基礎も同100mmで断熱、天井がブローイング700mm、窓は木製サッシ・アルゴンガス入りトリプルLow-Eガラス、換気は第1種熱交換換気システム。(財)建築環境・省エネルギー機構のQ値計算ソフト・SMASHによるQ値は、延床面積が小さいため計算上は1.14Wだが、延床面積140平方mのモデルプランで計算すると0.88Wとなる。

外がマイナス10℃でも室温20℃

 研究結果によると、今年1月に外気温がマイナス10℃まで下がっても、室温は20℃弱を維持するなど、生活発熱だけで十分に室温が保てることが実証されたほか、昨年秋と冬に行った宿泊体験者のアンケート調査でもほとんどが「快適」と回答。体感温度については最低気温が氷点下になる12月でも「寒くも暑くもない」という回答が最も多く、実験棟で設定した断熱仕様や生活発熱の状態などの条件下で、無暖房住宅の試みが成功していることがわかる。

環境と調和

 山下教授は「21世紀に入り、環境保護・省エネ・リサイクルに配慮した住宅や、地域性・伝統文化を尊重しながら環境に調和するサスティナブル住宅の建設・普及がどんどん重要になりつつあるが、無暖房住宅もその流れの1つとして取り組んだ。省エネ意識が強い長野県民にとって無暖房住宅は非常にインパクトがあると思うので、地元の業者の方々がこの実験棟を参考にして、より高い品質でユーザーに発信してもらいたい」と話している。


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